ねぇ、ねぇ

ねぇ、ねぇ

ねぇ。ねぇ。誰か、いる。僕だよ、プーだよ。
今、中陰っていうところにいるんだ。
どういうわけだかブログが書けるんだ。
肉球が一個足りないんじゃないかって突っ込みはやめてね。皮膚がんになって手術したんだ。
ほかにもがんが転移したんだ。去年の夏ごろから、吐き気が止まらなくって大変だったんだよ。
今年の1月には食事も取れなくなって、病院にいったんだ。お医者さんは暗い顔をして、ローズに話してた。もう長くないってね。
僕は、食欲がなく、ふらふらだったけど、よろよろよろけながら歩いて、物陰でじっとしてた。
離れてすんでいる長男の歩も見舞いにやって来てくれた。でも、僕にはスリスリする元気も残ってなかったんだ。
そんな僕をローズとモルクが物陰から引っ張り出して、お医者さんからもらったステロイドと栄養分をシリンジで口に入れてくれた。そんな大切なものだって知らないから、僕はものすごく抵抗したんだ。だけど、2人にしっかり押さえられて、飲み下しているうちに、不思議なことだけど、少しずつ元気が出てきた。そして、とうとう、歩けるようにもなったんだ。でも、今まで食べてた硬くて丸い食事は食べれないもんだから、ローズが、僕の大好きな、ぶりの刺身や焼いたカマスを食べさせてくれた。すると、ますます元気がでてきた。
1月に「プー、桜が咲くまでがんばれよ」って言ってくれてたモルクと、春には桜も見ることができるようになったんだ。
食事も柔らかくていい匂いがするものに変わってから、少しは食べられるようになったんだよ。前は6kgあった体重は3.5kgぐらいかな。ぱっと見は「あれ、プー。ライザップでダイエットしてきたの」って言われるくらいすっきりしたんだよ。
でも、遅咲きの八重桜が散ってしまった後、僕の体調は日に日に悪くなっていったんだ。吐き気が強くなるし、食欲もまた無くなってきたんだ。5月の連休が終わるころには大好きなぶりの刺身や焼いたカマスも食べられなくなっちゃった。気がついたら、僕は物陰にうずくまってる。
心配したローズが医者に連れて行ってくれた。でも、どうする事もできないんだ。点滴をうってもらい帰ってきた。僕は、意識がはっきりしなくて、動くこともできなくなった。心配して覗き込むローズの顔がボーっと見える。僕の名前を呼んでるけど、顔も上げられないんだ。体の奥の方がぎゅーっと絞られるような感じ。まったく力が入らない。
その晩、ローズは僕をベッドまで連れて行ってくれた。いつものようにローズと一緒に眠った。珍しく、夢は見なかった。
朝、目が覚めたら、ローズが心配そうに僕の顔を覗き込んでた。モルクがシリンジで水を持ってきてくれた。それをローズが少し飲ませてくれた。
僕が覚えているのはそこまで。
その後は、真っ暗で、宙ぶらりん。
でも、今は、もう、大丈夫。僕はとりあえず元気だよ。ローズ。
お土産に持たせてくれた焼きカマスありがとう。

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