僕の反省

poo.gifクロムが注文を受けた本を発送しようと、本の検品をしていた時の事なんだ。本の背表紙を見ているクロムの体が一瞬固まった。そして、背表紙の下の方をじっと見てる。それから突然僕のほうを見て、「プーの馬鹿野郎」って怒鳴るんだ。僕はびっくりしてローズの後ろに隠れたんだけど、僕の首を捕まえて、僕の目の前にその本の背表紙を持ってきて「見ろ!見ろ!」て叫ぶんだ。仕方が無いから見てみると、本の背表紙の下の方が、まるで猫の爪ででも引っかかれたみたいに破れてる。「プー、お前がやったんだろう、こんな所で爪を研いで。これじゃ、注文していただいたお客様に送る事ができないだろう。どうしてくれるんだ、プー」僕は恐る恐る本の背表紙のキズに僕の爪を当ててみたんだ。「ぴったり」確かに、犯人は僕らしい。
クロムは本を注文してくれたお客さんに「お詫びのメール」を書いている。僕はその間、ローズの後ろに隠れてた。本箱の角で爪を研いでいたときにうっかり、一番端っこにあった本の背表紙にも爪がかかったんだと思うんだけど、気がつかなかったんだ。大事な商品を台無しにして、僕は古本屋の猫としては失格だ。もう、この家には置いてもらえないかもしれないって落ち込んでいたんだ。そしたらクロムがローズに向かって言うんだ「プーは今夜の食事は抜きだからな」
僕は、最初ほっとしたんだ。とりあえず家には置いてもらえそうだ。良かった。でも「食事抜き」。そ、それはちょっと・・・。
夕飯の時、僕のご飯はやっぱり無かった。赤ちゃんの時、ダンボールに入れられて捨てられた時にも1度そんな事があったけど、とっても悲しくなってきたんだ。だって、僕の大好きなご飯が食べられないんだもん。最初は我慢してたんだよ、でも、だんだんお腹がすいてきて、足がふらふらしてくるんだ。これからは絶対にしませんって、ローズの足に擦り寄ってみたんだけど駄目だった。動くとお腹が空くから、ストーブのそばの壁に向かってうつむいていたんだ。でも、だんだん、お腹が空いきて、頭もボーっとして。僕はもうこのまま死んじゃうんじゃないかって思うと、とっても、とっても悲しくなって来るんだ。サキが部屋に戻った。クロムも2階に上がった。ローズも歯を磨いてる。もうみんな寝ちゃうんだな。僕はお腹ぺこぺこで一人ぼっち。きっと、お腹がすきすぎて、明日の朝には天国にいるかもしれない。でも、悪い事をしたんだから、天国じゃなくて地獄かな。どうしよう、地獄にいったらご飯がもらえないってローズに聞いた事がある。死んでもご飯が食べられないなんて、絶対やだ。
とうとう、ローズも2階に上がって寝ちゃった。どうしよう、僕は本当に一人ぼっち。そしたら、目から涙がぽろぽろ落ちてきて、止まらなくなったんだ。のどが渇いたから、水を飲みに行ったんだ。そしたら、そしたら、水の横にご飯が、ご飯が置いてあったんだ!ローズだ、ローズが入れておいてくれたんだ。水を一杯飲んでから、僕は夢中でご飯を食べた。すごく、すごく、おいしいんだ。水を飲んだせいかな、食べながらまた涙がぽろぽろこぼれてくるんだ。でも、涙で濡れたご飯はちょっぴりしょっぱくてどんどん食べられるんだ。お腹が一杯になったら、いつの間にか涙も止まってた。ありがとう、ローズ。もう絶対にしないからね。
サルにだって反省ができるんだからネコの僕にできないはずはないんだ。多分・・・。

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