古本屋と真夏の古本買取

8月になってはじめての古本出張買取に行ってきました。
古本屋について、皆さんのイメージはどんなものでしょうか?
店の奥で、年寄りが置物のように微動だもせず座っていて。お客さんが入ってきても「いらっしゃい」の声もない。時々、本を棚から取り出そうとすると、メガネの奥からギロリと睨む。1時間もいると、息苦しくなり、そそくさと店を出る。
今流行りの、大型新古書店の「いらっしゃいませー」の山彦攻撃と、BGMに慣れてしまった若い人たちには、信じられないくらいのサービス精神の欠落度。良くあれで食ってられるな「ありえねー」ってことになるのではないでしょうか。
今は、富山県の山奥に暮らしていますが、若い時、6年ほど東京に住んでいました。大学が神保町の近くにあったもので、神田の古本屋街にはよく足を運んだものです。正直私も、古本屋って暇そうでいいななんて思っていました。
古本屋が店で売る本は、店頭での買い取りも一部ありますが、主に大口の出張買取や市場での買取によって古本屋に運ばれてくるものです。ましてや、店舗が無く、インターネットのみで本を販売している私どものような古本屋では外からの買取が命綱。店に座っているだけでは、本は歩いてきませんので、店主は買取に東奔西走することになるわけです。
お店で置物のように座っている古本屋も、一旦お店を出れば、肉体労働者に変身します。
私も、店主見習として買取を担当していますが、この時期の買取は地獄の様相を呈します。出張買取では、大量の本を買い取りに行くわけです。たいていの場合、1部屋が書庫化し、本棚と本がぎっしりと詰まっています。エアコンの普及したこのご時勢でも、本のためにエアコンを買う人はいませんので、真夏のこの時期室内温度は30度を楽に越えています。ですから、私の買取時の服装は、ランニングに短パンにスリッパといういでたちです。特にスリッパというのがキモです。これはあるベテランの古本屋さんに教えてもらったのですが、革靴なぞ履いていこうものなら仕事になりません。普通の家に入る時は履物を脱いで入りますから、出入りのたびに靴を脱ぐ事になり、スリッパ以外の履物は考えられなくなります。やってみれば分かります。
サウナのような部屋の本箱からダンボールに本を詰める、大きな本は紐掛けする。そして、次から次へと本を車に積んでいく。この時期なら、ものの10分もしないうちにランニングが汗で染まります。2000冊の本ならダンボールで50箱前後。帰れば帰ったで、荷降ろし、清掃が待ってます。私のところは作業場にもエアコンが無いので、行くも地獄、帰るも地獄。正に無限地獄といったところです。真夏にこの作業を一人でやると2kgは確実に痩せます。ジムに通うよりは確実なダイエットです。あなたも、いかがですか?
今度古本屋へ行ったら、店番をしている古本屋の店主を、もう一度じっくり眺めてみてください。落ち着きはらった上半身の下でアヒルのようにバタバタしている足が見えてくるかもしれません。商売と名の付くものに楽なものなど無いようです。
ハードな肉体労働にもかかわらず、私は、部屋の中でうずもれている文化を、新しい世代に繋いでいく古本屋という職業が気に入っています。

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