ローズとクロムが古本屋さんをやってるので、何かお手伝いできないか僕なりに考えてみたんだ。例えば、シールはがし。クロムが仕入れてくる本には良くシールが貼ってあるんだ。それで、僕の舌でぺろぺろなめればはがすことができるかなと思ったんだけど、濡れるだけではがれなかった。もし、お店をやってるんだったら、招き猫のように、お店に座っている事もできるんだけど、インターネットで本を売ってるからそれもできない。僕って何の役にも立たないみたい。そう思うとちょっぴり悲しくなってくる。
それで、クロムに相談してみたんだ。僕にできる事ないかなって。
「仕事の役にたたなくてもいいんだよプーは」
「でも、古本屋にいて、毎日ローズとクロムが働いてるのを見てると、僕もちょっとお手伝いできないかなって思うんだ」
「でも、プーはお手伝いなんかしなくても、毎日楽しいだろ」
「それは、楽しいけど、時々とっても忙しい時僕に向かって『猫の手も借りたいよ』って言うじゃない」
「そうだね。でも、『猫の手も借りたい』って言うのはとっても忙しいって意味で。本当にプーに手伝ってもらいたいと思って言ってるわけじゃないんだよ」
「じゃ、僕は何の役にも立たないわけ」
「そんな事はないさ。プーは古本屋のお手伝いはできないかも知れないけど、ずいぶん私達の役に立ってるんだよ。前も、話したよね。ブナの木のこと」
「ああ。あのたっぷりで、どっしりの木」
「木って言うのは、家を建てるために使われるだろ。だけどあの木は、杉の木と比べると曲がってて柱なんかにはできないだろう」
「うーん、確かに曲がってて、家を建てるのに役立ちそうも無いな」
「だけど、プーにとっては大切で、大好きなきなんだろう」
「うん、大好き」
「もしあの木がまっすぐで、柱にぴったりの木だったら、もうとっくに切り倒されているだろうね」
「えー。そうなったら大変だ。僕の大好きな木なのに」
「うっかり、人の役にたとうものなら、どんどん利用されて切り倒されてしまうかもしれない。あの木は、柱にできそうもないから切り倒されなかった。そのお陰で、プーはあの木の下にいることができるし、幸せな気分になれるんだよね。牛だって馬だって犬だって、人の役に立つから、昔はずいぶん利用されたもんだよ。だからプーも人の役にたとうなんて無理に思わなくてもいいんだよ。人の役にたつときは自然に役に立ってるものさ。プーが家にいるから、ローズもサキも僕もずいぶん心が癒されてるんだよ。チップは、まるで、あのブナの木みたいに僕達にとっては大切な宝物なんだ」
「へー。僕とブナの木は役に立たないけど、役に立ってるんだ」
「そうだよ、プー。この世の中に存在するものは何であれ誰かの役に立ってるものさ。それが目立つか目立たないかの違いだけ。あんまり目だって、お金儲けの役に立つものは、みんなが奪い合い、しまいには無くなってしまうかも知れない。そのために、この地球上から消えていきそうな生き物もずいぶんいるんだ。」
「そうか、じゃ僕は古本屋さんの役に立たなくてもいいんだね。」
「そうだよ。プーは私達のそばにいるだけでいいんだよ。それがプーのお仕事さ。プーでいることがプーのお仕事なんだ」
「分かった。じゃ僕はこれからもプーのままでいることにする」
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