ローズやクロムの爪は平らで、動かないけど、僕の爪は、先っちょが尖ってて、指の中にしまう事ができるんだ。歩いている時はしまっていて、獲物を狙う時は思いっきり伸ばして使うんだ。便利でしょ。こういうところは人間よりも猫のほうが凄いと思うんだ。立派なひげと、立派な爪。大体、人間には尻尾が無いんだから、動物の風上にも置けないような気がする。尻尾が無くて、どうやってハエを追っ払う事ができるんだろう。尻尾でバランスをとらないで、どうやってジャンプするんだろう。そういえばローズやクロムが梁から梁へ飛び移ったりする所を見たことが無いな。尻尾が無いんだからできるわけがないよね。
僕達の爪は良く伸びるんだ、そして、しばらくするとむずがゆくなってくるから爪とぎをするんだ。何度か爪とぎをしてると、古い爪の表面が取れて、中から新しい爪が出てくるだよ。そこで、僕は毎日爪とぎをしてるんだ。ダンボールでできている爪とぎが、1階と2階に一つずつおいてあるんだけど。僕はあんまり使って無い。だって、僕の住んでる家は、壁が木でできてるから、どこでだって爪とぎができるんだ。痒くなったら、壁の角っこのところですぐに爪とぎができるので、僕はこの家がとても気に入ってる。
特に、家中においてある本棚は、柔らかい木でできているので時々端っこの方で爪を研いだりしてるんだ。だからわざわざ爪とぎを用意しなくたっていいと思うんだけど、クロムはどうしても爪とぎを使って欲しいらしいんだ。だから、クロムの前で壁で爪を研ぐと物凄く怒るんだ。確かに家中の壁の角っこがささくれだらけになってるけど、形あるものはいつか無くなるわけで、僕らが爪とぎしなくたって、100年も経てば、この家だってあるかどうかも分からない、だったら、僕達だって生きてるうちに家の壁に想い出を刻み込んだってそんなに悪くは無いと思うんだ。クロムだって僕のことを責めるけど、家のリビングの柱には子供達の成長の記録だとかいって、子供達を立たせて、頭の天辺の辺りの所の柱にキズをつけてるんだよ。僕達の爪とぎの跡の方が確かに目立つ事は事実だけど、そんなに目くじら立てることも無いと思うんだよね。
「五十歩百歩」ってこういう時のためにあるんじゃないかな。
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