僕の手

poo.gifクロムとローズが古本屋を始めたきっかけの一つは僕が作ったんだ。
前に、僕が病気になったことを話したけど、みんな覚えているかな。おしっこが出なくなってとっても痛い思いをした事。今思い出すだけでも痛くなってくるとっても、とっても怖い思い出なんだ。
それから、ローズが高い餌を買ってくれたことも話したよね。でも、この高い餌を買うのはあんまりお金持ちじゃないローズとクロムには結構大変な事だったらしいんだ。そこで、クロムが思いついたのが本やレコードを売る事。
クロムは本好きで本を沢山持っていたし、昔聞いていたJAZZとかいう音楽のレコードも一杯持ってたんだ。時々、へんてこりんな音楽を聴いてるなと思ってたんだけど、あれがJAZZだったんだね。
楽天フリマというところで売れた本やレコードのお金で僕の食べ物を買ってくれていたんだ。ところが今はそれが無くなってしまったらしくて、アマゾンとかいう所だけで本を売っているらしいんだ。でもそれがとっても不思議なんだ。僕が知っているアマゾンって言えば、サキの中学校の教科書にのっていた写真で見たんだけど、怖いピラニアとかいう魚が住んでいる大きな川で、周りは木ばっかりだったような気がするんだよね。今住んでるところも木ばっかりの所だし、そんな所にどうしてお客さんが来るのか、僕にはとんと分からない。
「どうしてアマゾンなんかで本が売れるの」ってクロムに聞いてみたんだ。すると、クロムが言うにはアマゾンって言うのは密林の中にあるあのアマゾンじゃないらしいんだ。だからと言って、町の中にあるんでも無いらしい。どこにも無くて、どこにでもある不思議な本やさんらしいんだ。インターネットというものができてからは、砂ばっかりの砂漠にいたって本は売れるんだって言ってた。
「インターネットって何」って聞いたら、くもの巣のように世界中にめぐらされた魔法のひげで、どんな遠くにある物も感じることができるんだって。確かに、僕のひげが地球の裏側まで伸びていたら、地球の裏側にいるネズミだって捕まえる事ができるかもしれない。砂漠のネズミだってアマゾンのネズミだって追いかけられそうな気がする。人間ていうのは、僕みたいな立派なひげは持ってないけど、額だけは野原のように広いから、頭がよく回るんだろうなきっと。
とにかく今は、アマゾンのお陰で僕は病気にならないご飯を食べる事ができるわけなので、くもの巣のようなひげには感謝しなくっちゃいけない。これからはローズやクロムが忙しい時にはお手伝いもしなくっちゃ。
ローズやクロムが僕に向かってよく言うんだ「猫の手もかりたい」ってね。

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