ねぇ、ねぇ 5

ねぇ、ねぇ

ねぇ。ねぇ。誰か、いる。僕だよ、プーだよ。
今、中陰っていうところにいるんだ。
どういうわけだかブログが書けるんだ。
僕がクッキーより大きくなった翌年の春から、クッキーの態度が急に変わった。
僕が近づくと「シャー」と叫んで、あっちへ行け、近寄るなっていうんだ。
今までみたいに仲良くしたいのに、すっかり嫌われ者になっちゃったんだ。
いつも、夜は一緒に寝てたのに・・・。
仕方が無いので、それ以来、夜はローズのベットで寝ることにしたんだ。でも、クッキーと違ってローズはでかいから、寝返りをうたれたりすると、押しつぶされそうで、最初は怖かったよ。でも、ローズはいい匂いがして優しく撫でてくれるから、僕はローズのベットがすっかり気に入ったんだ。
でも、時々雷が鳴るような音がして飛び起きることがあるんだよ。最初はなんだか分からなかったけど、いびきってやつなんだ。僕らも、時々いびきはかくけど。人間のいびきは桁違いに大きく響き渡るのでビックリするんだ。最初のいうちはクッキーが母さんのような気がしてたけど。それからは、ローズが僕の母さんになったんだ。
朝起きると、ベットを出て、台所ヘ向かうんだ。朝ごはんを食べにね。でも、ご飯が無いときがあるんだ。そんな時は、ベッドまで戻って、「ねぇ、ねぁ」と右手でローズの頭をトントンする。ローズが台所に行けば僕も台所。トイレに行けばトイレの前、お風呂に行けばお風呂の前で、出てくるのを待ってるんだ。外に出たくなったら、「ねぇ、ねぇ」とローズの肩を叩く。すると、ローズが台所のドアを開けて、外に出してくれる。夕食の時は、サキとアユムの間に座り団らんに参加するって具合で、僕はすっかり家族の一員になったんだ。モルクはたまに乱暴をするけど、皆、優しくて僕を家族として扱ってくれるんだ。
クッキーは僕と違って、どちらかといえば人嫌いなところがあって、いつも、皆から離れてる。相変わらず「シャー、シャー」言われて、困ってしまうんだ。仲良くしたいのに。
家には梁が2本むき出しに出てるので、その上は安全地帯。さすがのモルクもそこにいれば手が出せない。モルクから逃げるには絶好の場所。僕は、梁の上でいつものように昼寝してたんだ。そしたら、屋根に太陽が落っこちてきたような大きな音がして、家がグラッと揺れたと思ったら僕はゴロリと転がって、梁から滑り落ちてしまった、あわてて、前足で梁をつかもうとしたけど、つめの先がかすっただけ。「あぁ、駄目だ。助けて~」と叫んだ瞬間目が覚めた。
夢から覚めたら、目の前には、真っ赤な顔をした大きな鬼が立っていた。髪の毛はボサボサで、天に向かって角が生えてる。筋肉がもりもりで、血管がはちきれそう。真っ黒でとげとげの付いた金棒をどんどんと地面に叩きつけて、僕を睨みつけている。
「やばい、殺される。ローズ助けて~」

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