プーが退院した日

プーが私のいない隙にブログを更新したらしい。
プーの病気については私にも想い出がある。過去のブログの記事を一部修正してここに残しておこう。プーの怖かった想い出がどんなものか多少は分かるかもしれない。
我が家には「クー」という雌猫と「プー」」という雄猫がいる。2匹とも子供たちが拾ってきた猫たちだ。
プーはほんの小さい時に娘がダンボールに入れられているのを拾ってきたのだが、すでに家には息子が拾ってきたクーがいたため、別の家に引き取られた。ところが、2日もしないうちに戻されてきた。鼻をたらして風采のさえない子猫は結局我が家の住人となった。
小さいうちはクーが体を舐めたりして可愛がっていたが、今では体重がクーの2倍にもなり、すっかり疎んじられている。むしろ嫌われているといった方が正しいだろう。プーが近寄るたびにクーは「うぅ~」と唸り声を上げて威嚇する。
クーは美人で、猫らしく家の中でも孤高を保ち、いわゆる猫らしい猫だ。一方プーはどちらかというと不細工で猫というよりは人間に近いところがある。
プーは生まれてまもない時期から私たちと暮らしているせいか、自分も家族の一員だと思っている節がある。食事の時間になると、いつの間にか、今は東京で暮らしている息子の席に座っている。かといって食べ物に手を出すわけでもなく、眠そうな目をしながら家族団らんの会話に耳を澄ませている。
妻が台所にいる時は台所に、洗面所にいる時にはその前にちょこんと座って待っている。食欲は異常に旺盛で、お腹がすいたら力強く足にすりより訴えてくる。朝早くにお腹がすいた時には、寝室のドアを閉めておいても、ドアノブを手で回し、ドアを開けて入ってきて「みゃー、みゃー」と訴える。それでも駄目な時は、やんわりと手を噛んだりもする。とにかく人懐っこい猫だ。
そのプーが1週間入院した事がある。
かなり重症だったらしく、医者の話ではあと半日遅れたら危なかったらしい。
プーは3年前にも同じ病気で3日ほど入院している。その時に医者に薦められ、尿道結石用のえさを食べさせていたのだが、普通に売っているえさに比べると目が飛び出るくらいに高級なものだった。
しばらくは与えていたが、普通のものに戻したのが良くなかったらしい。
いたい思いをして、病院から一週間ぶりにプーが家に戻ってきた日の事だ。
妻はプーの退院がよほどうれしかったらしい。リビングのストーブの前で、お腹を見せながら寝転がっているプーの、毛をそられた前足を見ながら「一人で入院していて寂しかったね」「たくさん注射打たれて痛かったね」などと盛んに声をかけていた。怖かった病院での出来事を思い出すのか、プーが時々体を震わせているのがとても気になるらしいのだ。
私は仕入れてきた500冊ほどの本の清掃をしながらその様子を眺めていた。夜の12時を過ぎ娘も妻も寝室に上がった。私もストーブの前で気持ちよさそうに眠っているプーを置いて2階へ上がり、本の出品をしている時だった。突然、下のリビングから、怯えたようなプーの泣き声が聞こえてきた。
目が覚めて、誰もいない事に気づき、病院での一人の夜を思い出し怖くなったのだろう。必死に私たちを捜し求めているように感じたので、私は吹き抜けの2階から「プー!プー!」と声をかけた。すると、一目散に階段を駆け上がる音が聞こえたと思うまもなく、プーが私の足に体を摺り寄せてきた。抱いてやると、私の腕をしっかりと掴み、じっと私を見つめ返してきた。「一人にしないでね」と訴えているようだった。しばらく抱いていたが、出品作業ができなくなるので、静かに妻のベッドに降ろしてやった。すると、うれしそうに布団の中にもぐりこんで行った。

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