以前から名前は聞いていたが、日本一油臭いという噂を聞いてずっと避けていた。3年前に、新津でどうしても早朝、温泉に入りたくなり、恐る恐る入ったのが最初だった。3年ほど前だろうか。初めて行ったときは、ナビで行ったのだが迷子になってなかなかたどり着けなかった。主要道に小さく新津温泉の看板があるが、初めてだと見逃してしまう。廃材置き場のようなさびれた場所に古臭い建物があり、入口に新津温泉と書いてある。
玄関に入って左手に8畳ほどの管理人室。300円払って右手の廊下をどんどん進んでトイレの手前。左手が宴会場、右手がお風呂へ向かう廊下。女湯を過ぎて突き当りが男湯。ドアを開けると、正面の壁に棚。左手に浴槽へのガラス戸がある。浴槽は4人程度が入れる楕円形。左手にからんが2か所。ほとんど腐りかかっている鏡が3か所。どこをとってもエントロピーがかなり増大しているレトロ感。むしろ廃墟感に近づいているのかもしれない。
油臭は確かに強い。油臭と言っても、ガソリンや灯油のにおいではなく。コールタール臭だ。確かに匂うがそんなに悪い匂いでもない。温泉のレトロ感をにおいでも演出しているといった具合でいい感じだ。
お湯がこれまたいい。41度程度のぬる湯。トロントしたなんともいえないお湯の豊かさ、強い塩味がする。無色透明だが濃厚なお湯だ。昔はもっと強力なにおいがしたらしいが今はだいぶん薄くなったと、地元の人に聞いた。アトピーや内臓疾患によく効くらしい。地元の人は湯口においてあるコップで源泉を飲んでいる。
外にある廃材は、ボイラーでお湯を過熱するためにつかっているらしい。過熱しているものの源泉ちょろちょろかけ流しの昭和空間全開の温泉だ。
それから3年たち今日の新津温泉の周囲には廃材はなくなった。ボイラーが壊れてしまい。ガスのボイラーを2基設置して近代化されたのだ。その分料金が400円に。しかし、ガスボイラーと廃材以外は何一つ変わっていない。中に入ると先客の二人がいなくなり。温泉を独り占め状態に。久しぶりに写真撮影もさせてもらった。相変わらずいい湯だ。普段は混んでいることが多いのに、午後4時に来るとさすがに人はいない。しばらくすると地元の方が入ってきた。昭和35年から新津の湯に入っている人で、おしんという朝ドラの子役をしていた女優さんがテレビのロケで新津温泉に入りに来た事。ところが、その番組が新潟県では放送されなかった事。料金が上がってから、お客が一段と減った事など、いろいろ聞かせてもらった。
帰りがけに気が付いたが、温泉の湯口に布がかかっていて、そこに黒いものが付着している。湯の花ならぬタールの花だった。
一度新津温泉にはまると、中毒になるようだ。あの匂いだ。しばらくするとあの匂いが懐かしくなってくる。そうするとだんだん落ち着かなくなってくる。結局またやってくるのだ、新津温泉に。湯舟につかり匂いに浸る。なんだか故郷に帰ってきたような気分になる。でも、間違っても家族で来る温泉ではない。温泉好きが一人で来るところです。
いつまでも廃墟にならずに、営業を続けてほしい温泉だ。だけど、壁の鏡はまともに顔も見えないので、新しいのに変えてほしいな。地元のおじさんたちもそう言ってたよ。東京にお住いのオーナー。何とかして。
営業時間 午前8時~午後7
定休日 お盆と年末年始
料金 400円
施設 2
泉質 5 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 加温 かけ流し
露天 なし