僕の憂鬱

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おととしまでは、自由に外を散歩できたんだ。
ところが、町内会で、猫外出禁止令がだされて、僕は外に出れなくなってしまったんだ。
禁止令と言ったって、本当にそんな法律があるわけじゃなくて、庭いじりが好きな家庭から、猫のウンチが花壇に転がっているので、猫を外に出さないでくれといわれただけなんだけど、それ以来、僕は外に出してもらえなくなったんだ。
それまでは、虫を追いかけたり、花の匂いをかいだり、風と一緒に走ったり、時々はネズミを捕まえてローズに自慢したりしてたのに…。
今は、一日中、家の中で過ごしている。僕の家はほとんど吹き抜けになっているから、梁から梁に飛び移ったり、ロフトで遊んだりと、普通の家よりは楽しいんだけど、広々とした野原に比べれば、なんだか、檻の中に入れられているような気分になってくるんだ。
いくら、僕たちが外に出なくたって、庭のウンチは無くなりはしないんだ。だって、外には野良猫が何匹もいるんだから。近所付き合いも大事だからってローズが言うけど、これって、飼い猫に対する差別なんじゃないかな。
飼い猫に自由を!
そこで、僕は何とか外に出ようと、がんばってみたんだ。玄関に通じるドアは、ドアノブにつかまれば何とか開けることができるんだ。ところが玄関のドアは重くて、僕には開けられない。どうしても誰かに開けてもらわなくっちゃならないんだけど、ローズやクロムに頼んでも相手にしてもらえない。そこで思いついたのが黒猫ヤマトのサービスドライバーのお兄さん。お兄さんは、毎日発送する古本を取りに午後の4時過ぎにやってくるんだ。
黒猫ヤマトの車の音が聞こえたら、すぐに玄関に通じるドアを自分で開けて、玄関のドアの前で待っている。お兄さんが玄関のドアを開けた瞬間、隙間からすばやく外に出る。そうやって、僕は又自由を手に入れることができたんだ。久しぶりの野原は本当に広くて、気持ちよかった。自由ってものの素晴らしさを体一杯に感じることができたんだ。
ところが、ある日、黒猫ヤマトの車の音が聞こえたので、ドアを開けようとすると、ドアが開かないように、封筒の詰まった段ボール箱がおいてあるんだ。ローズの仕業だ。僕がドアを開けれないように、ローズが置いたんだ。
その日から、僕の憂鬱が始まった。
もう2度と外には出られない。窓から、外を眺めながら、僕は、いつか猫の猫による猫のための政治が行なわれる時を夢見ているんだ。

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